銀幕市岸に接近しつつある怪獣島を止めるため――とかいう大義名分は割とどうでもよく、結成された探検隊もここにあった。



「なんでこんなことに……」
　星砂海岸を出発したボートの上で、ややグロッキーになりながら冬月真は呟いたとか呟かなかったとか。
　銀幕市にムービースターが実体化して、ついでにハザードだの事件だので息つく暇もなく一年弱。そろそろ、市民も慣れを覚えつつあるが――やはり、他人の出来事と自分の身に降りかかる事件は違う。
　カフェ・スキャンダルで休憩していた『だけ』のはずが、気がつけば怪獣島への探検隊の一員になっていた。しかも目的はチュパカブラの捕獲だという。
　ぼんやりと海に向けていた視線を、ボートの中に戻した。
　隊員は彼を含めて五人。初対面の相手もいたが、一つの目的に向けて団結した時点でくだけた雰囲気になっていた。
「血吸い……人食い……私の求める最高の産物です」
　ククククク、と嬉しそうに笑いながら、鈴木字楽はミッドナイトのバッキー、ペトルーシュカと会話している。向かう先は密林だというのに、相変わらずの正装だ。探険以前に海水すら敵となる黒ずくめ。
　だが彼以上にツッコミ甲斐があるのは、鬼灯柘榴だった。曼珠沙華、彼岸花とも呼ばれる花をあしらった真紅の着物をまとっている。日本人形のような美貌とあいまって、浮世離れした存在感をだ。ただし、向かう先は怪獣の跋扈する未開の島ということを忘れないで欲しい。
「そうだ、隊長を決めましょうよ。誰がいいかな？」
　七海遥が声を上げた。彼女は迷彩柄の半袖短パン、加えて帽子とリュックというオーソドックスな探険ルックに身を包んでいる。シオンというラベンダーのバッキーも同じ衣装というこだわりようだ。
「ここは公平に、くじ引きをしようか」
　梛織が提案した。夏仕様で半袖だが、いたって気軽な普段着だ。ショルダーバッグにはサバイバルグッズが抜かりなく収納されているが、休日にピクニックへ来たようにしか見えない。
「これを使ってくださいな」
　柘榴は袖に手を差し込み、割り箸とマジックを取り出した。海風にはためく袂は、そんな物が内蔵されているような気配はまったくないのだが。
　受け取った字楽は、箸を割ると一本の先を塗る。そして背後でシャッフルすると、皆の前に差し出した。
「誰に決まるんでしょうねぇ、ペトルーシュカ」
　視線で譲り合った後、レディファーストで遥と柘榴が引く。無印。
　次に真――これも無印。
　残った二本を巡って、字楽と梛織は静かな攻防を繰り広げ――当たりを引いたのは、梛織の方だった。
「隊長、よろしくお願いします！」
「梛織さん、頼りにしていますわ」
「まあ、あれだ、死なない程度に頑張れ」
「……何が待ち受けているでしょうねぇ」
　梛織は笑顔で頷いた。
「責任重大だな。張り切って務めさせてもらうよ」
　そして、ボートは砂浜に到着する。



「上陸、一番乗り！」
　遥が元気よくボートから飛び出した。隊長の役目を奪われた梛織は、苦笑気味に二番手に甘んじる。
「絶好の狩り日和ですねぇ……」
　怪しげな笑みを浮かべながら、字楽が続き、梛織の背後に立つ。
「あ」
　柘榴が呟いた時には遅かった。反射的に梛織は回し蹴りを繰り出す。正確で鋭い一撃が、側頭部に決まった。
　鈍い音に遥が振り返り、ボートを繋留していた真が目を剥く。
　字楽の体が浮き、横へ飛ばされた。しばらく滑って止まると、ペトルーシュカが彼に駆け寄る。
「大丈夫ですか？」
　柘榴が声をかけると、彼はゆらりと立ち上がる。服についた砂を払うと、ペトルーシュカを肩に乗せた。
「……ああ、驚きました」
　平坦な口調で感想を述べて、戻ってくる。
　梛織はばつが悪そうに謝った。
「悪い、つい癖で。後ろに立たれると攻撃しちまうんだ。痛くなかったか？」
「痛いですよ……？」
　字楽はにや、と笑う。衝撃でか、鼻血がつと垂れた。
「字楽さん、鼻血鼻血」
　準備のいい遥がティッシュを差し出す。ありがとうございます、と受け取った字楽は――鼻をかんだ。
「血ですよ血……なんて美しい色なんでしょう」
　驚く四人の前で、字楽は血の付いたティッシュを広げてフフフと笑っている。
「背後に誰も立てない、って隊長として駄目だろ」
　真は今さらながらにつっこんだ。隊長といえば先頭を切って密林を突き進む役だ。それなのにそんな癖を持っていられたら、おちおちついていけない。途中で精神的に疲労しすぎて脱落する。
「では、どなたか……」
　柘榴は視線をさまよわせた。遥もきょろきょろと見比べる。
　視線が、真に集まった。
「俺？」
　自分を指す。梛織と字楽も加わって、力強く頷いた。
　隊長、交代。



「あ、スカイフィッシュ！」
「本物は肉眼じゃ見えないって」
　遥が上を指し、梛織がつっこむ。柘榴がおっとりと微笑んだ。
　一行は着々と、島の中心部を目指して進んでいた。ＵＭＡまでいるとあって、この島にはありとあらゆる種類の生物がいる。ベーシックな恐竜から巨大なほ乳類、赤ん坊ほども大きさがある蟻の群れなどに出くわしたが、この一行の目的はチュパカブラなので、割愛させていただく。
　ざくざく道なき道を突き進むと、少し拓けた場所に出た。
「待ち伏せに良さそうな場所ですね」
　ふふ、と柘榴が言う。元気に遥が作戦を披露した。
「捕獲にはやっぱりトラップですよね！　チュパカブラはヤギの血を吸うそうだけど、近所のスーパーにヤギ肉は売ってなかったから、代わりに羊肉でどうでしょう！」
　ビニール袋に包まれたラムと、なぜかヤギのぬいぐるみが現れる。
　隊長として、真は尋ねた。
「……ぬいぐるみ？」
「見た目でごまかされてくれないかなって。落とし穴を掘って、これを上に置いてみるんです」
「羊とヤギじゃ匂いが違うから、駄目じゃないかな。それに、精肉は血抜きしてあるし」
　梛織がやんわりと却下する。しゅんとした遥に、字楽は物騒なアドバイスをした。
「生き血……生肉を囮にしてはどうですか？　ねぇ、ペトルーシュカ」
　そしてじっと梛織を見る。死後の経過は異なっているものの、ムービースターも血肉を備えた人間だ。
「あ、そっか」
「『そっか』じゃない！　駄目駄目駄目！」
　命の危険を感じた梛織は叫ぶ。にっこりと柘榴がなだめた。
「いいではありませんか、腕の一本や二本」
「よくないだろ……」
　真に賛同するように、シオンも鳴く。バッキーにいさめられて、遥は諦めることにした。
「わかったって、シオン。冗談だってば」
　先ほどまでのやりとりは、真面目に検討しているようにしか聞こえなかったが。梛織はつっこみたかったが、文字通り墓穴を掘る羽目になるので止めておいた。
「そろそろ、疲れただろ？　休憩にしよう」
　真は隊長の威厳を取り戻すように仕切る。賛同の声が重なって、ランチタイムになった。
　ラムは生なので論外として、遥の取り出した弁当箱には豪快にげんこつおにぎりが詰め込まれている。
　さっそく真はおにぎりを掴む。
「いただきま」
　す、まで言えなかった。地を揺るがすような振動が、一行を襲った。
　身構える一行へ向かって、振動は徐々に近づいてくる。荷物をまとめる余裕もなく、密林を割って主は姿を現した。
　オビラプトルの群れ。
　二足歩行の肉食恐竜だ。恐竜にしては小型だが、血走った目をしてこちらへ突き進んでくる。一匹二匹なら退治のしようもあるが、二桁に上る数、女性をかばいながらでは無理がある。
「逃げろ！」
　号令をかける必要もなく、彼らは一目散に走った。走った。走った。散らないように、最後尾を守る真が「字楽、左だ！」「遥、真っ直ぐ！」と声を張り上げる。
　密林が唐突に途切れる。和服なのに先頭をきっていた柘榴は、きわどいところで急停止した。足元でぱらぱらと土が落ちる。そこは断崖絶壁だった。下にはごうごうと川が流れている。あと二歩、いや一歩進んでいれば見事に落下していただろう。
　安堵しかけた背中に、字楽がぶつかってバランスを崩す。その次の梛織が慌てて背中を引っ張ったが、後方に気を取られていた遥が激突し、駄目出しの衝撃を加えた。
　崖っぷちで、微妙な均衡を保とうと必死になる。
　遅れること数秒、真が追いついた。もう逃げられないところまでオビラプトルは迫っている。
　意を決して、遥の背中を突き飛ばした。悲鳴を上げながら、彼らは将棋倒しに落ちていく。見守る暇もあればこそ、真も後を追って飛び降りた。



　口から耳から鼻から、水が侵入してくる感触。上下の感覚は消え失せ、ただ苦しかった。
　あがこうにも、水面がわからない。激流に翻弄されて、意識が薄らいでいく。
　死を覚悟したのか、それともその前に気絶したのか。
　すべてが真っ白になった直後、不快な圧力に引き上げられた。胃の辺りに気持ち悪いものを覚え、えずく。
　咳き込むように水を吐いて、代わりに息を吸い込んで、そこでようやく空気のある場所に戻ってきたことを知った。
　目を開け、柘榴は身を起こす。
　周囲には探検隊の仲間が倒れていた。バッキーも一緒だ。彼らがいるのは非常に狭い陸地で、ざらざらしている。
「……？」
　首を巡らせて、息を呑む。
「ネッシー……」
　首長竜の背中に、彼らはいた。実のところは水棲化したプレシオサウルスだったが、この探険はＵＭＡと出会うためなのでネッシーでいいことにしておく。
　ごうごうと音を立てる流れをものともせず、ネッシーは悠々と泳いでいる。何の気まぐれか知らないが、助けてくれたようだ。
「あらあら、面白いこと」
　微笑みつつ着物の裾を絞っていると、皆が気づきだした。現状を認識するなり、テンション高く騒ぎ出す。
　そんな背中の賑わいに気づいたのか、ネッシーは断崖が切れて陸地が覗いている場所へ、接岸した。
　一行は陸地に戻る。
「ありがとう！」
　遥の声に会釈するように頭を揺らして、ネッシーは川に沈んだ。



「さて、と」
　真は断崖を見上げた。
　一行がいるのはわずかな陸地、帰るも進むも登らなければ話にならない。どうにかして川下りを成功させ、海に出て泳いで帰るという手段もなくはないが。
　ずぶ濡れになった彼らは、幸運にも枯れ木を見つけて火を熾すことに成功した。なんとか暖を取り、服を湿り気が残る程度まで乾かした。
　段々と、夕暮れが迫ってくる。今夜はここで野営になるだろうか。
「リュック、流されちゃった……」
　遥が淋しそうに呟く。その一言に、真の胃袋が切ない声を上げた。返す返すも、げんこつおにぎりは残念なことをした。
「……あっ、チョコレート一枚なら俺、持ってるけど？」
　梛織が満面の笑みを浮かべる。王道な展開が待ち受けてくれていた。流されずに済んだショルダーバッグから、奇跡的に無事だった板チョコが現れる。
　きちんと十等分して、半分は明日のためにしまっておく。
　配ろうとすると、柘榴はにっこり微笑んで断った。
「私はいいわ。これがあるから」
　袂から竹の水筒を取り出す。酒か、何か特殊な液体かと淡い期待を抱いたが、正体はただの水だった。
　遥は、ちまちまと囓って糖分を腹に収める。
「ミルク味……。……食べますか、ペトルーシュカ？」
　字楽はこの世の終わりのような顔をして、ペトルーシュカに貴重な食料を差し出した。当の相手はぷいと顔をそむけて、拒否の意を示す。結果、チョコレートは備蓄された。
「あ、俺もいいよ。朝ご飯ちゃんと食べてきたから」
　梛織は明るく配当を断った。
　真は口の中で、とろかすようにして味わった。考えたくはないが、最後の晩餐になる可能性もある。
　盛大な水音に川を見ると、角のある巨大なウミヘビのような生物が、猛スピードで泳ぎ去っていった。
「あ、オゴポゴ！」
「どこどこ！？」
　梛織と遥のはしゃぎように、なんだかどっと肩に疲れがのしかかってくる。
　真は心の中で、天国の妻・美咲に話しかけた。なあ、くじけてもいいか？
　――ダメですよ♪
　笑い含みの答えが、聞こえたような気がした。



　直立する崖に背中を預け、火を絶やさないようにして、交代で番をしているうちに夜が明けた。
「さあ、ロッククライミングだ！」
　真の号令に、隊員は断崖を見やる。上も密林が続いているのか、植物の蔦が幾本も垂れ下がっている。うち、丈夫そうなものがいくつかあった。
　梛織は一番手を名乗り出た。上に何がいるかわからない。それに、先回りしておけば女性陣の手助けになれる。
　サバイバルナイフをくわえて、蔦に体重をかけた。
　崖の高さは四メートル前後、ハードアクション映画の主人公にとってはたやすいものだ。デコボコした表面はいい足がかりにもなる。
　十分もかけずに登りきると、辺りを観察した。危険そうな生き物は、今のところいない。
　大木を探してロープをかけ、下に垂らした。そして合図を送る。
　次は字楽で、体に巻き付けたロープをこちらからもたぐり寄せる。それでも梛織の倍近い時間がかかった。
　呼吸を乱している彼は回復するまで置いておいて、下では柘榴が準備している。着物をからげて足を露出しているが、やはり登りにくいようだった。
　ほとんど引き上げる形で、彼女を導く。
　あと少し、という時だった。不意に、頭上を羽ばたきが通り過ぎた。鳥にしてはうるさい。黒い影――羽音の主が目の前を急降下していく。
「字楽！」
　手を離すこともできず、助けを呼んだ。肉体労働は趣味じゃないんですけどねぇ、とかぼやきながらも、字楽は協力する。
　縁から柘榴を見ると、彼女にまとわりつくように何かが飛んでいた。翼竜に似た、羽毛のない黒灰色の巨大生物だ。
「あらあら、コンガマトもいたのね」
　柘榴はのんびりと分析している。ナイフを手に、梛織は攻撃に出る機会を見計らった。失敗すれば落下して、トマトのごとく潰れるのは必至だ。
　コンガマトが動きを止めた、その瞬間を狙わないと。
　奴が襲いかかる。彼女は岸壁を蹴った。振り子の原理で、両者は急接近する。上下から叫び声が響く中、柘榴は袂から五寸釘と金槌を取り出した。
　接触した瞬間、熟練した手つきでコンガマトに釘を打ち込んだ。獲物に攻撃されて、ＵＭＡは悲鳴を上げる。
「あははははははは！」
　狂ったように笑いながら金槌を振る様は、映画のシーンそのものだ。狂気を孕んでいる。
　敵わないとわかって、コンガマトはほうほうの体で去っていった。
　出る幕がなかった梛織は、呆然と膝をつく。と、金槌をしまった柘榴がこちらを向いた。
「引き上げてくださいます？」
　にっこりと、柔らかな笑顔でお願いされて、男二人は黙々と従った。
　柘榴が木の根元で休憩している間に、遥の番になる。
　真に手伝われてロープを巻き付けた遥は、同じ要領で運び上げられる。
　額に汗して半ばまで導いたところで、真の怒声が異常を告げる。字楽にホールドを頼んで、梛織は崖下を見下ろした。
　今度の来襲は、コンガマトより大きな、巨大な生物だった。人間に似た、筋骨隆々の体にコウモリのような翼が生えている。
「バッツカッチ！　会えて嬉しいんだか怖いんだかわかんないよー！」
　遥が泣き声のような叫び声を上げる。
「待ってろ！」
　梛織は蔦を滑るように降りて、遥に並んだ。先の相手より三倍近い大きさだから、やりやすい。
　バッツカッチが遥を捕まえたところで、梛織は飛んだ。広い翼につかまる。バランスを崩して落ちていく最中、心臓があるとおぼしき位置にナイフを突き立てる。
　一声叫んで、頭から地面に落下する。梛織はバッツカッチから飛び退いた。期せずして、駆け寄った真が目前に迫る。
「ぶ」
　膝蹴りが命中した。
　無事か、の『ぶ』だったのか、当たったから反射的に声が出たのか、確認するのはあえて止めておいた。
　ＵＭＡはひくひくと痙攣して、絶命する。
　顔面を覆って悶絶する真に何と声をかけたらいいものか。梛織は眉間に皺を刻んだ。



「あ、」
　遥は慌てて言葉を飲み込む。
　チュパカブラの発見は、唐突なものだった。何か白いものが見えるから、気になって近づいてみた。そうしたらそれはほ乳類らしき四つ足の生物で、ちょっとがっかりしながら立ち去ろうとした。そこへ、例のＵＭＡが現れて吸血行為を始めたのだ。
　背後へ向けて大きく腕を振り回し、異常を知らせる。
　合図に集まった隊員は、息を呑んで幻の存在を凝視する。そして我に返ると、チュパカブラを包囲した。
　後ろ足で立ち上がった奇妙な生き物は、異変を察知した。が、遅かった。梛織が投げた、鋼鉄の糸で編まれた網にチュパカブラは絡め取られる。
「やった！」
　歓声を上げたが、まだ早い。網もろとも、ジャンプする。遥はとっさにかじりついた。一緒に宙を舞い、地面に叩きつけられて息が詰まる。
「……っ、逃がさないんだから！」
　牙だか爪だかが腕に刺さって、痛い。けれど意地になって力をこめた。
「遥！」
　仲間が駆け寄って、チュパカブラをロープで縛り上げる。
　梛織は捕獲したＵＭＡを逆さ吊りに持ち上げた。
「意外とちっちゃいもんだな」
　字楽がうっとりと呟く。
「……やりましたねぇ。本物ですよ、ペトルーシュカ」
　柘榴は獲物をつついた。
「映画に妙な情熱を注いだスタッフに乾杯、かしらね」
　真は大儀そうにため息をついた。
「ようやく帰れる……」
　遥は笑って、シオンに頬ずりした。
「やったね。手形とかとっちゃおうかな」
　顔を見合わせて、仲間は、笑う。
　色々なハプニングに見舞われたけど、トータルで見れば、楽しかった。
「さて、帰るとするか」
　隊長の声に、ふと遥は疑問を思い出す。
「そういえば、忘れてたけど」
「私も気になっていたのですけれど」
　柘榴と声を揃えて、尋ねた。
「「捕獲した後は、どうするつもり？」」
　奇妙な間。というか沈黙。
「それはまあ、その」
「考えてなかったな……」
　気まずく口ごもる、真と梛織。字楽が通夜が七件重なった時のような笑顔で、挙手した。
「……よろしかったら、私が持ち帰っていいですか……？」
　有無を言わさない迫力に、満場一致で処遇が決定した。



　こうして一つの謎は解明された。だが、世の中にはまだ数多くの謎が残っている。その全てを解決するまで、探検隊は活動を続けるのだ。